「余暇活動における意思決定支援と合理的配慮」と題して、大阪教育大学特別支援教育部門講師の 今枝史雄先生にお話しいただきました。 1時間30分の講義でしたが、合理的配慮とは何か、合理的配慮に必要不可欠な事、などのお話をギュッと詰め込んでいただき、 とても勉強になり、考えさせられる会となりました。 ここで少し抜粋したいと思います。 ①合理的配慮とは、すべての人が社会参加するための必須アイテムである。 ②合理的配慮とは、個人個人のニーズに応じた活用が必要。 →そのためには本人・保護者の合意形成が必要である。 ③合理的配慮をするためには、基礎的環境整備が必要。 →選択が可能な環境づくりが大切である。 2016年に障碍者差別解消法が施行され、その中で、不当な差別的取り扱いの禁止、 合理的配慮不提供の禁止が規定されました。 その中に「定型発達者と平等に」という文言がありますが、この「平等に」という言葉が 誤解を生んでいます。 フェンス越しに野球の試合を見る時、背が足りず見えない子がいたとします。 平等は、木の箱を一つずつ貸出し、その上に乗って見られるようにすることです。 でも、それだとまだ低くて見えない子がいます。 公平は木の箱を見える高さになる数だけ渡すことです。 大切なのは、同じ数の木の箱を渡すことではなく全員が野球の試合を見ることができ、 全員が社会参加できることです。 「環境を変えてしまう」ということもあります。フェンスを網にしてしまえば、 どんな背たけの子でも野球を見ることができます。 どうやったら社会参加できるか合理的配慮は社会に参加するための必須アイテムなのです。 メガネはご承知のように、視力によって度数を変えることで、見えるようになるアイテムです。 もしメガネが平等だったら同じ度数ということになります。 メガネは平等ではなく、現社会では公平公正なものになっています。 また、合理的配慮は合意形成が大切です。 本人に「これでいいか」聞くことです。そうじゃないと、ただのおせっかいになってしまいます。 また、方法が選択できるということが大切です。だからこそ、その人に合ったものを選べるわけです。 1人1人のニーズに合わせるということが大切です。 自閉症スペクトラム障害には視覚支援が有効です。 聴覚過敏、言語のコミュニケーションが苦手、創造性の障害など、様々な理由があります。 ポイントは三つ。 「わかりやすく判断しやすい」 文字をたくさん書くのではなく、色や形や数で視覚支援を行います。 「失敗しないようにする」 情報量が多いと間違いやすいです。正しく伝わらないことがあります。 理解できているかという視点が大切です。 視覚支援が目的になってはいけません。大事なのは理解できていることが目的です。 「構造化」 誰でも見通しがないと不安になります。 今、何をするのか。 どこでするのか。 どのようにするのか。 いつまでするのか。 こうしたことが示されていると安心なわけです。 これを「構造化」といいます。 また、知的障がい者の意思決定支援についてですが、 多くの知的障がい者は自分で決めた経験がないということ。 食事に行っても、自分で選べると思っておらず、メニューの右上のものを頼むものだと思っていたというお話や、 選択肢は用意しているものの本人には選ばせていないことが多い。 なぜならその選択肢の中には経験したことのないものが多く、選べない。 選択機会を設定しているように見えて、選択機会になっておらず、本人のこだわりに合わせている だけの機会となっている。など、学校現場での事例をまじえてくわしくお教えいただきました。 まずは本人の意思を尊重し共感すること。 そこからやり取りをして、本人が自分の意思で選択すること、納得して決定できることが大切だと学びました。 今、社会で合理的配慮という言葉だけは聞く機会があり、障がい者雇用の場面でも企業は障がい者雇用にあたり 合理的配慮を尽くさなければならないとさかんに言われています。 けれども企業が当人のために選択できる環境を整えることができているのか またその配慮について、本人の合意を得ているのかという観点から見ますと、全然できていないのが 現状ではないかと思いました。 先生のお話の中で、個人個人に応じた選択肢を提示し、本人や保護者に 「これでいいですか」と尋ねる。 これがないと合理的配慮とは言えない。 これがないとただのおせっかいになるんですよ。という言葉がありました。 それをふまえて、これからの活動、また社会での障がい者への支援について考えていきたいと思いました。 受講したみんなにとって、とても良い学びの機会になったと思います。